2025.12.8
水管橋ってなに?社員が語る仕事ダイアリー vol.1
■ プロジェクトの背景
ミッションは「水管橋(すいかんきょう)」の架設。 この橋は、ただの水の通り道ではありません。
「パイプビーム形式」といって、水を運ぶパイプそのものが橋の梁(はり)として機能する特殊な構造です。
強度と安定性を保つため、パイプ自体をわずかにアーチ状(キャンバー)に反らせ、その中を通る本管を一直線にする。設計図通りの完璧な精度が求められる、難易度の高い現場でした。

■ 自然との闘い
現場で私たちを一番苦しめたのは、「季節の変わり目」でした。 秋から冬へ。朝晩の冷え込みと日中の暖かさの差が激しいこの時期、ステンレス製の橋はまるで生き物のように呼吸をします。
「熱伸縮」。 金属は温度によって伸び縮みします。特にステンレスは熱の影響を受けやすく、早朝と昼間では橋の長さが全く異なります。 日中、気温が上がり日が差すと、橋全体で「10mm以上」伸びてしまうこともあります。許容誤差はわずか「±5mm以内」。 つまり、自然な伸び縮みだけで許容範囲を軽く超えてしまうのです。 私たちは刻一刻と変わる「鋼材の温度」を計測し、架設する瞬間の長さを逆算しながら、慎重に、そして粘り強く調整を続けました。

■ 歓声と、静かな誇り
そして迎えた架設当日。 現場には多くの地域の方々が見学に来られていました。
大勢の視線が集まる中、巨大な橋がクレーンで吊り上げられていきます。 「入るか? ずれていないか?」 張り詰めた緊張感の中、橋は計画通り、ピタリと所定の位置に収まりました。
「よし!」 無事に架設を終えた瞬間、こみ上げてきたのは大きな達成感と、心底ホッとした安堵感でした。 元請様とも阿吽の呼吸で連携し、チーム全員で成し遂げた仕事。 この橋はこれから何十年も、この地域の人々の生活を支え続けます。 残りの工事も気を抜かず、最後まで完璧に仕上げる。
それが私たちのプライドです。

用語解説①:キャンバー(予備撓み)
橋は完成後、自分の重さや中を通る水の重さで、わずかに下にたわみます。その「たわみ」をあらかじめ計算し、施工段階では上向きに弓なり(アーチ状)に反らせて作っておくことを「キャンバー」と言います。
用語解説②:熱伸縮
金属は温まると伸び、冷えると縮みます。特に長い橋梁では、気温差によってその長さが数センチ単位で変化します。ミリ単位の精度が求められる建設現場では、この「温度による変化」を完璧に計算に入れる高度な技術が必要です。